本作の白眉は、ケイト・ベッキンセイル演じるアリスが「母親」という立場でありながら鏡の向こうへ足を踏み入れる点にあります。単なる冒険譚を超え、大人が忘却した好奇心や不条理への畏怖が、幻想的な美術とライティングによって生々しく描き出されています。
ルイス・キャロルの原作が持つ少女の成長譚を、あえて成熟した女性の視点へと変奏させたことで、物語は深い精神性を帯びました。言葉遊びを映像トリックへと昇華した演出は、活字では成し得ない視覚的な目眩を誘発します。想像力の境界を飛び越える本作は、観る者の心に眠る自由な精神を揺さぶる、真の映像魔術です。