仲代達矢の鋭利な眼光と、平幹二朗との魂がぶつかり合うような競演こそが本作の真骨頂です。昭和モダンが香る映像美の中で、栗原小巻の美しさが男たちの殺伐とした世界に鮮烈な光を差し込みます。スクリーンから立ち上る濃密なハードボイルドの熱気は、現代の映画では決して味わえない至高の映画体験を約束してくれます。
星新一の原作が持つ不条理さを、映像特有の生々しい身体性で再構築した手腕も見事です。文字だけでは捉えきれない人間の焦燥感が、光と影の演出によって見事に視覚化されています。実体のない存在を追い求める姿は、現代社会における個の喪失という普遍的テーマを鋭く突きつけ、観る者の魂を激しく揺さぶり続けます。