No synopsis available.
一九六四年の映像作品「愛」は、視覚と触覚の境界を揺さぶる極めて前衛的な野心作です。ミクロの視点で捉えられた肉体のクローズアップは、もはや人間を超越した山脈や地表のような圧倒的な質感で迫ります。この抽象化された美学こそが、言葉を超えた純粋なエロスの正体を、観る者の網膜に直接焼き付けるのです。 岸田今日子らの静謐ながらも力強い存在感は、映像に血の通った情動を吹き込んでいます。肉体の衝突を執拗に追うカメラは、単なる官能を超え、個の境界線が崩壊していく過程を雄弁に物語ります。観客はただ目撃するのではなく、映像そのものが持つ鼓動に同化させられる、唯一無二の芸術体験に没入することになるでしょう。
監督: 久里洋二