本作の真髄は、老境の女性たちが醸し出す静謐な日常と、冷徹な犯罪という相容れない要素が衝突する際の凄まじいギャップにあります。主演のエレーヌ・デュドネが見せる、慈愛に満ちた祖母の顔と復讐者としての鋭い眼差しの演じ分けは圧巻の一言。犯罪映画の緊張感をコメディの軽妙さで包み込む洗練された演出が、観る者の倫理観を心地よく揺さぶります。
淑女の品格を保ちつつ情け容赦のない手段を講じていく姿は、弱者が強者に抗うための究極の知略を提示しているかのようです。年齢という記号を逆手に取った痛快な展開の数々は、現代のブラックコメディにも通じる普遍的な輝きを放っています。映画というメディアが持つ意外性の楽しさを、これほど上品かつ大胆に描き出した作品は他にありません。