アンソニー・ステファンという沈黙のヒーローが、その風貌を自らパロディ化して見せる意外性こそが本作の真骨頂です。脇を固めるフェルナンド・サンチョらの過剰なエネルギーと調和し、画面からはジャンル映画特有の熱気と遊び心が溢れ出しています。銃撃戦の緊張感さえも笑いへと昇華させる演出は、伝統的西部劇への愛ある批評であり、観る者に格別の解放感をもたらします。
殺伐とした不条理な世界を知恵とユーモアで軽やかに泳ぎ切る哲学も、本作の大きな魅力です。勝負事の駆け引きを人生のメタファーとして描きつつ、決して深刻にならず「楽しむこと」を最優先する姿勢は、現代の観客にも鮮烈に響くはず。マカロニ・ウェスタン黄昏時に咲いた、最高に陽気で自由な人間賛歌をぜひ堪能してください。