1970年のブラジル、軍事独裁下の緊張とW杯の熱狂を少年の純粋な視点から切り取った演出が実に見事です。ミシェル・ジョエルサスが見せる、期待と不安が入り混じった繊細な表情は観る者の胸を強く締め付けます。国家の狂乱と個人の孤独を対比させ、激動の時代をあえて静謐なドラマとして描いた点に、本作の本質的な美学が宿っています。
孤独を分かち合う人々との交流を通じて描かれる、血縁を超えた絆の尊さも魂を揺さぶります。ジェルマーノ・ハイユットの重厚な演技は、絶望の淵で差し伸べられる手の温もりを雄弁に物語っています。歴史の荒波に翻弄されながらも日常に希望を見出す人間の強さを、瑞々しい映像美と共に突きつける珠玉の人間讃歌です。