あらすじ
高校時代に見知らぬ男にレイプされた経験を持つカメラマンの土屋名美は、それが原因で極度の潔癖症となり、男と体を重ねると殴る蹴るの暴行を加えるようになっていた。忌まわしい過去を忘れるため酒を飲み過ぎた名美は酔いつぶれ、ラブホテルの回転ベッドで目を覚ました。かたわらには男の死体とビデオカメラがあり、名美はカメラからビデオテープを抜き取りホテルを後にしてしまう。その日から彼女のもとには脅迫電話がかかるようになり、編集者の村木に問題のビデオを見せようとするのだったが…。
作品考察・見どころ
石井隆監督が自らメガホンを取った本作は、闇と光、そして降りしきる雨が織りなす圧倒的なビジュアル美が最大の見どころです。湿り気を帯びた都会の夜を舞台に、絶望と狂気が交錯する様は、単なる官能の枠を超えた純文学的な深みを湛えています。画面から立ち上る虚無感と、それとは対照的な生の熱情が、観る者の視覚だけでなく触覚にまで訴えかける強烈な作家性が炸裂しています。
川上麻衣子の魂を削るような熱演と、根津甚八が放つ枯れた男の色気が火花を散らし、愛と破滅の境界線を鮮烈に描き出します。痛みを抱えた者同士が惹かれ合い、堕ちていく姿はあまりに美しく、暴力的なまでに純粋です。救いのない世界に宿る究極のロマンチシズムこそが本作の本質であり、観賞後は胸を締め付けられるような切なさと、忘れがたい余韻に包まれることでしょう。