この作品の魅力は、黄金期の英国コメディが持つ洗練されたテンポ感と、名優たちのアンサンブルが生み出す絶妙な「間」にあります。スタンリー・ホロウウェイの重厚な演技と、ケイ・ケンダルの輝くような気品が、ドタバタ劇の中に一級の品格を添えている点は見逃せません。
扉の開閉といった細かな視覚演出で笑いを増幅させる手腕は白眉です。些細な掛け違いが制御不能な混乱へと発展していく様は、まさに理屈抜きの娯楽の真髄。洗練されたユーモアの奥にある、騒々しくも温かな人間味こそが、時代を超えて観客を魅了し続ける本質的な輝きなのです。