あらすじ
田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈は、脱サラした夫・輝道と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保のことを過剰なまでに信奉していた。二人は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも新天地でのスローライフを満喫する。そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていく。一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された<掟>を知ってしまう。それでも村八分にされないように、家族のため<掟>に身を捧げることに…。
作品考察・見どころ
本作が突きつけるのは、平穏な日常の裏側に潜む集団心理の狂気と、逃げ場のない閉塞感が生む根源的な恐怖です。美しい田舎の風景を背景にしながらも、視線の暴力や異質な共同体ルールがじわじわと理性を侵食していく演出は圧巻。単なるスリラーの枠を超え、現代社会にも通じる同調圧力の恐ろしさを浮き彫りにする、冷徹で鋭利な視座が貫かれています。
深川麻衣が体現する繊細な揺らぎと、若葉竜也の静かながらも強固なリアリズム、田口トモロヲの怪演が、観る者を逃れられない悪夢へと誘います。人間の内面に潜む悪意が剥き出しの狂気へと変貌する瞬間を、鮮烈な映像美で描き出す本作は、観客の倫理観を根底から揺さぶる極上の衝撃作と言えるでしょう。