あらすじ
大正7年。初めての女優主演映画といわれる帰山教正監督「生の輝き」の以前に、実は月島桜が主演した「永遠の謎」という映画があった。しかし、この「永遠の謎」は、警視庁の映画検閲によって妨害され、ラストシーンが遂に撮影されないまま、その名を映画史から消されてしまった…。 昭和のはじめ、東京。私立探偵・魚塚甚の元に、月島桜と名のる老婆から、誘拐された娘・桔梗を探して欲しいとの依頼がくる。調査を続けるうちに、魚塚は、この事件全体がまるでドラマのように出来すぎていることに気がついていく…。
作品考察・見どころ
林海象監督の鮮烈なデビュー作である本作は、昭和初期の浅草を彷彿とさせるモノクロームの迷宮です。活動写真への偏愛に満ちた映像美は、観る者を映画という夢そのものへと誘います。サイレント映画の手法を採り入れ、台詞を字幕で処理する演出が、現実と虚構の境界を美しくも残酷に曖昧にしています。
主演の佐野史郎の硬質な佇まいと、活動弁士・松田春翠の語りが生み出す独特のグルーヴは圧巻です。失われたフィルムを追う旅路の深層には、映像が持つ魔力への憧憬が刻まれています。観客の想像力を極限まで刺激する、静謐ながらも熱を帯びた至高のシネマ体験を約束する一作です。