林海象監督の鮮烈なデビュー作である本作は、昭和初期の浅草を彷彿とさせるモノクロームの迷宮です。活動写真への偏愛に満ちた映像美は、観る者を映画という夢そのものへと誘います。サイレント映画の手法を採り入れ、台詞を字幕で処理する演出が、現実と虚構の境界を美しくも残酷に曖昧にしています。
主演の佐野史郎の硬質な佇まいと、活動弁士・松田春翠の語りが生み出す独特のグルーヴは圧巻です。失われたフィルムを追う旅路の深層には、映像が持つ魔力への憧憬が刻まれています。観客の想像力を極限まで刺激する、静謐ながらも熱を帯びた至高のシネマ体験を約束する一作です。