あらすじ
昭和初期の東京・山の手を舞台に、中年実業家の男の友情とその妻への秘めた思いを描く人情ドラマ。昭和12年春。中小企業の社長・門倉修造は、会社勤めのまじめなサラリーマン水田仙吉とは気が合い20年来の付き合いだった。その水田が地方転勤から3年半ぶりに東京に戻ってきたため、再び門倉と水田一家の家族ぐるみの付き合いが始まった。
作品考察・見どころ
本作は、言葉にできない情愛を「阿吽」の呼吸で描き切った、大人の矜持が光る珠玉の人間ドラマです。高倉健と板東英二という対照的な二人が魅せる、友情を超えた魂の結びつきには激しく胸を打たれます。抑制された演技の中に滲む、親友の妻への秘めたる思慕。その潔さと切なさが、降旗康男監督の端正な映像美によって、日本映画特有の高潔な美学へと昇華されています。
向田邦子の原作が持つ繊細な心理描写を、映画は「間」と「視線」の芸術として見事に再構築しました。活字では捉えきれない日常の微細な揺らぎが、豪華キャストの競演によって圧倒的な実在感を持ち、観る者の心に静かに浸透します。不器用ながらも誠実に人を愛することの尊さを、昭和初期の情緒豊かな風景と共に謳い上げる本作は、今こそ深く味わうべき至高の逸品です。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。