本作の真髄は、静謐な日常が「人形」という客体によって侵食されていく歪んだ映像美にあります。松原智恵子と横内正が織りなす、緊迫感溢れる演技の応酬は圧巻です。当時のテレビ映画特有の湿り気を帯びた映像の質感こそが、逃げ場のない閉塞感を完璧に描き出しており、観る者を一瞬で濃密な悪夢へと引きずり込みます。
人間の業や罪が、無機質な人形の「笑い」として具現化する演出は、観る者の倫理観を鋭く突き刺します。形あるものが意志を持つという根源的恐怖を、過剰な特撮に頼らず、緻密な構図と音響のみで増幅させた手腕は見事です。本作は、現代ホラーが失いつつある「想像力に訴える恐怖」を再認識させる、心理サスペンスの傑作です。