アルノー・デプレシャンが自らのルーツに迫る本作は、ドキュメンタリーという枠を超えた、魂の鎮魂歌です。売却を控えた実家という限定的な空間を舞台に、カメラは壁に刻まれた歳月ではなく、そこに存在したはずの「欠落」を執拗に追い続けます。語られる言葉の一つ一つが、フィクションよりも鮮烈に、不在の女性への思慕を浮き彫りにする演出は圧巻の一言に尽きます。
父と息子たちが対話を通じて家系図を遡る姿は、単なる追憶ではありません。それは、死者が残した記憶を現在の生へと繋ぎ止める、切実な儀式です。極めて私的な物語でありながら、観る者の心にある「家」という場所の呪縛と救済を激しく揺さぶる本作。映像に宿る静謐な熱量は、私たちが誰しも抱える根源的な愛の形を、残酷なまでに美しく再発見させてくれます。