この作品の真髄は、テレビ映画の枠を凌駕する、静謐さと狂気が同居した圧倒的なゴシック情緒にあります。凍てつく古城の質感や霧深い森は、登場人物の内面に潜む野蛮な衝動を具現化しているかのようです。抑制された色彩と計算された陰影のコントラストが、観る者の生理的な恐怖を静かに、かつ確実に煽り立てます。
エリック・ド・ダデルサンら実力派が見せる、眼差しで語る演技も白眉です。呪われた宿命に抗いながらも、獣性に蝕まれていく人間の悲哀が痛切に伝わります。理性と本能の境界が崩壊していく様を描く本作は、人間の深淵に潜む「抗えない暴力性」を浮き彫りにする、極めて鋭利な形而上学的ホラーの傑作と言えるでしょう。