この作品の真髄は、小沢昭一という稀代の怪優が体現する、泥臭くも愛おしい人間の生命力にあります。野心と小心さが同居する主人公の佇まいは、当時の社会が抱えていた熱気と個人の焦燥を見事に映し出し、その喜怒哀楽が観る者の心に肉薄します。さらに、若き日の吉永小百合が放つ清冽な輝きは、殺伐とした出世競争に一筋の光を与え、作品に類まれな気品を添えています。
瀬川昌治監督の演出は、組織の中で翻弄される個人の悲喜劇を鮮やかなリズムで描き出します。滑稽さと切実さが紙一重で交錯する表現は、時代を超えて現代を生きる私たちにも通ずる普遍的な問いを投げかけます。出世という記号を通して、真の幸福や人間の尊厳とは何かを再考させる、情熱と皮肉が絶妙にブレンドされた傑作です。