あらすじ
ヴィテクは列車を追いかける。この一見ありふれた出来事が、ヴィテクのその後の人生にどのような影響を与えるのか、3つの異なる展開が描かれる。
作品考察・見どころ
クシシュトフ・キェシロフスキが描く本作の真髄は、運命という名の残酷な多面性にあります。たった一度の「列車の成否」という偶然が、一人の青年の人生を全く異なる三つの道へと分岐させる構成は、観る者の心に「もしもあの時」という根源的な問いを突きつけます。政治的動乱期のポーランドを背景に、個人の意志と歴史の潮流が衝突する様を、哲学的かつ情熱的な筆致で描き切っています。
主演のボグスワフ・リンダによる、同一人物でありながら異なる魂を宿したかのような繊細な演じ分けは圧巻の一言です。手持ちカメラが捉える生々しい映像美と、緊迫感溢れる演出が、偶然が必然へと変貌していく瞬間のカタルシスを見事に表現しています。自由とは何か、そして我々の生を規定するものは何か。この作品は、スクリーンの向こう側から我々自身の人生の重みを激しく揺さぶる傑作です。