鬼才ケン・ラッセルが英国音楽の魂に迫る本作は、単なる記録映画の枠を遥かに超えた、情熱的で過激な「音の私叙詩」です。伝統的な作曲家たちの旋律を、ラッセル独自の奔放な視覚イメージで再解釈する演出は圧巻であり、クラシック音楽がいかに生命力に溢れ、肉感的で、狂気に満ちたものであるかを観客の細胞に直接訴えかけます。
ここにはアカデミックな解説などは存在しません。あるのは、エルガーやブリテンの音楽に宿る風景や歴史、そして人間の業を抉り出すラッセル自身の飽くなき探求心です。音楽を「聴く」のではなく、その背後にある情動を「体験」させる映像魔術は、芸術を愛するすべての者の心を激しく揺さぶり、英国音楽という豊かな迷宮へと我々を誘うのです。