日本初の総天然色映画という歴史的意義を超え、本作の真髄は色彩が放つ生命の躍動と解放感にあります。木下惠介監督は、信州の素朴な自然の緑と、高峰秀子演じるヒロインが纏う鮮烈な赤を対比させ、戦後日本の古い道徳観が揺らぎ、新たな自由が芽吹く瞬間を鮮やかに切り取りました。
何より圧倒されるのは、高峰秀子のコメディエンヌとしての天賦の才です。無垢ゆえの奔放さと、愛すべき純粋さを併せ持つカルメンの存在は、観る者の理屈を吹き飛ばす幸福なエネルギーに満ちています。近代化の滑稽さを笑い飛ばしながらも、故郷への根源的な情愛を掬い上げる演出は、まさに日本映画の黄金期を象徴する、光と色彩のシンフォニーです。