松五郎こと無法松(阪東妻三郎)はトラブルを引き起こす暴れ者だが、どこか憎めない人力車夫。ある日竹馬から落ちた少年・敏雄(沢村アキオ)を助けたことがきっかけで陸軍大尉の吉岡家へ出入りするようになるが……。
阪東妻三郎が体現した松五郎の剛と柔の対比こそ、本作の真骨頂です。粗野な車夫が見せる一途で高潔な献身は、時代を超えて観る者の魂を震わせます。特に、祇園太鼓を叩き鳴らすシーンで見せる圧倒的な身体性は、言葉を超えて内なる情熱を雄弁に物語っており、映画という動的な表現の極致に達しています。 岩下俊作の原作が持つ情緒を、稲垣浩監督は映画ならではの躍動するリズムへと昇華させました。活字では捉えきれない音の迫力と俳優の眼差しを武器に、身分を超えた情愛と、報われずとも貫かれる無垢な精神を見事に視覚化しています。これぞ、銀幕でしか成し得ない至高の人間賛歌といえるでしょう。
監督: 稲垣浩
脚本: 岩下俊作 / 伊丹万作
音楽: 西悟朗
制作: Yuko Nakaizumi
撮影監督: 宮川一夫
制作会社: Daiei Film