川島雄三監督が描く本作の真髄は、停滞と流動が同居する人間の業の肯定にあります。新珠三千代の圧倒的な生命力と三橋達也の情けない色気が、洲崎橋という境界線で火花を散らす様は圧巻です。湿り気を帯びた路地や酒場の喧騒は、単なる背景を超えて、行き場のない情念そのものとして鮮烈に立ち現れます。
モダンな乾いた笑いと、拭い去れない泥臭い絶望。この絶妙な均衡こそが本作の白眉です。もがきながらも橋を渡りきれず、腐れ縁を漂い続ける男女の姿。そこには、美化されない人生の本質的な愛おしさと残酷さが凝縮されており、観る者の魂を激しく揺さぶるのです。