この1967年版は、推理劇としての緻密さ以上に、画面を支配するゴシック・ホラー的な陰鬱さと冷徹な緊張感が際立っています。暗闇と霧を効果的に用いた演出は、見る者の深層心理に訴えかける「目に見えない恐怖」を具現化しており、テレビ映画という枠組みの中で、極めて純度の高いサスペンス空間を構築することに成功しています。
原作小説が論理的解決を重んじるのに対し、映像化された本作は視覚的な「呪いの実在感」を強調している点が白眉です。ヴェルナー・ザントリーが見せる氷のような知性と、文字では描ききれない静謐な熱量を放つ演技は、古典に新たな血肉を与え、理性を超えた未知の領域へと観客を誘う、抗いがたい魔力に満ちています。