あらすじ
大手物産会社に勤務していた深野志保は、商事会社に勤務するサラリーマン、香月明宏と結婚を控えていた。周囲の人には、ささやかではあるが幸せをつかもうとしている女性に見えた。しかし志保は結婚式の最終打合せの場に姿を見せず、ある男のところに向かっていた。その男とは、以前明宏が紹介した豊村功だった。志保は結婚資金全部を豊村に貸していて、その金の返済期日がその日であった。明宏に気付かれる前に何とかしなければと思いつつ男の店に着いた志保であったが、その店はもぬけの殻だった。しかしそこに一台の車が止まる。志保の目の前には、冷血な借金取立人達の姿があった…。
作品考察・見どころ
この作品の真髄は、肉体という有限の造形に宿る無限の情念を、冷徹かつ官能的な視点で切り取った点にあります。主演の今野樹里が放つ、人を惹きつけながらも拒絶するような孤高の佇まいは、観る者の倫理観を揺さぶり、狂気と美の境界線を曖昧にします。単なるホラーの枠を超え、所有欲が自己崩壊へと繋がる過程を、静謐な映像美で描き出した演出は圧巻です。
和泉史郎や松山鷹志ら、実力派が魅せる欲望に憑りつかれた剥き出しの演技も、本作の緊迫感を極限まで高めています。視覚的な恐怖以上に、人間の心の奥底に潜む「剥製のような永遠」への渇望を抉り出すメッセージ性は、時代を経ても色褪せることがありません。一度足を踏み入れれば逃げられない、美しき悪夢のような映像体験を、ぜひその身で刻み込んでください。