本作の真髄は、静寂の中に潜む湿り気を帯びた恐怖演出にあります。タイトルにもある榎の木が放つ圧倒的な存在感は、映像ならではの陰影表現によって単なる風景を執念の化身へと変貌させています。観客は画面越しに漂う怨念の匂いと、逃れられない因果応報の重みに身を震わせることになるでしょう。
三遊亭圓朝による名作怪談が原作ですが、語りの芸を視覚的な悪夢へと見事に昇華させています。言葉だけでは到達できない、母性への渇望と残酷な美しさが入り混じる映像表現は、映画という媒体の強みを最大限に引き出しています。伝統的な和製ホラーの美学が、人間の情念の深淵を暴き出す傑作です。