園子温監督が放つ、極私的で静謐な詩学。本作の本質は、劇的な物語の不在そのものに宿る美しさにあります。一人の女性の日常を固定されたカメラが凝視し続けることで、観客は普段見過ごしている「時間そのものの質量」をまざまざと突きつけられるのです。
主演の鈴木桂子が見せる、作為を削ぎ落とした佇まいは圧巻です。ただ存在するという、あまりにも根源的で孤独な営みが、これほどまでに強烈な輝きを放つのかと驚かされるでしょう。映画とは単なる娯楽ではなく、人間の生の揺らぎをそのまま封じ込めるタイムカプセルであると証明する、魂を揺さぶる一作です。