善人として生きる呪縛を滑稽かつ切実に描いた本作の真髄は、嫌われる努力を始める男の姿を通じ、人間性の本質を炙り出す皮肉なユーモアにあります。主演アルトゥーロ・バリュスが見せる、優しさを捨てきれない不器用な悪役への変貌ぶりは、観客の共感を誘いながら善悪の境界線を鮮やかに揺さぶります。
実力派キャストのアンサンブルが、日常に潜む愛の歪みを浮き彫りにします。他者の目に縛られがちな現代人の生き方に一撃を見舞う演出が見事です。何を遺すべきかという深遠なテーマを毒気たっぷりの笑いで包み込んだ本作は、観る者の倫理観を心地よく裏切ってくれるでしょう。