篠田正浩監督が泉鏡花の幽玄な世界を映像化した本作の白眉は、五代目坂東玉三郎が放つ性別を超越した神秘的な美にあります。純真な百合と高貴な白雪姫という一人二役を演じ分け、人間の情愛と異界の威厳を同時に体現したその存在感こそが、物語に血肉を通わせる核となっています。
原作の戯曲は言葉で紡ぐ「幻視の文学」ですが、映画はそれを壮大なセットと特撮技術で具現化しました。近代的な理性と古い約束が支配する神話的世界の衝突を描き、ラストの洪水シーンでは自然の猛威を映像ならではの圧倒的なスケールで突きつけます。言語を超えた美学の極致がここにあります。