イスタンブールに暮らす疲れ切った作家の男は、ある若い女性の失踪事件に物語の可能性を感じて捜索に乗り出すことに。だが謎を追っていくと、話は次第に危うく、血なまぐさくなってゆき...。
本作の魅力は、ネジャット・イシレルが体現する「疲れ果てた男」の静かな狂気と、退廃的な街の質感が溶け合うノワールな美学にあります。真相を追う執念が、単なる正義感を超えた「好奇心」という根源的な衝動へと昇華される過程は圧巻で、観客を物語の深淵へと引きずり込みます。 光と影の鋭いコントラストが、言葉以上に主人公の孤独な内面を雄弁に物語っており、映像表現の極致を感じさせます。失うもののない男が辿り着く真実の重みと、剥き出しの人間性を描く冷徹な視線は、観る者の魂を激しく揺さぶり、ジャンル映画を超えた強烈な余韻を残すはずです。
監督: Uluç Bayraktar
脚本: Mehmet Eroğlu / Damla Serim
制作会社: Ay Yapım