木下惠介監督が挑んだ、歌舞伎や義太夫の様式美を大胆に導入した独創的な演出に圧倒されます。スタジオセットを活かした幻想的な照明と色彩の切り替わりは、極限状態の「姥捨て」という残酷な伝統を、神々しいまでの叙事詩へと昇華させました。生と死のサイクルが峻厳に描かれ、現代人が忘れかけている命を繋ぐことの重みを突きつける、美しくも壮絶な魂のドラマです。
主演の田中絹代が、役作りのために自らの前歯を抜いて挑んだ鬼気迫る演技は、もはや伝説と言えるでしょう。リアリズムを排し、あえて人為的な様式美の中に人間の生々しい感情を閉じ込めた点に、本作の映像表現としての凄みがあります。音と光が融合した濃密な空間によって、人間の深い業と無償の愛が鮮烈に浮き彫りになり、観る者の深層心理を激しく揺さぶり続けます。