この作品は、カジミール・マレーヴィチという芸術家の魂を、単なる伝記映画の枠を超えて描き出しています。画面を構成する色と形そのものが、彼が提唱したシュプレマティズムを体現しており、観る者はまるで動くキャンバスの中に入り込んだかのような錯覚を覚えるでしょう。抽象の極致を追求した彼の眼が見ていた世界が、息を呑むような映像美で再構築されています。
ヴィタリー・アジュノフの静かながらも狂気を孕んだ演技は、抑圧された時代の中で芸術の自由を叫び続けたマレーヴィチの苦悩を見事に昇華させています。既存の価値観を破壊し、ゼロから真理を創り出そうとする彼の情熱は、混迷を極める現代の私たちに、自己の意志を貫く勇気を強く問いかけてくるのです。