あらすじ
アルツハイマーの母親と2人暮らしの孤独な青年、サイモン。高校で生物学を教える彼は、自殺を考える留学生のミナに思いとどまるよう真摯に説得する一方、プライベートでは自殺サイトで自殺志願者を見つけては、一緒に自殺するふりをして相手の血液を抜き取り、自らの哀しい欲望を満たすヴァンパイアだった。しかしある日、思いがけず集団自殺に巻き込まれた彼は、一緒に逃げ延びた女性に自分がヴァンパイアであると告白してしまう。すると女性は自殺を改めて成功させるべく、自らの血の提供を申し出るのだが…。
作品考察・見どころ
岩井俊二監督が全編英語で挑んだ本作は、従来の吸血鬼映画の枠組みを鮮やかに解体し、孤独と生の渇望を描き出した極上の抒情詩です。血を求める行為を暴力ではなく、他者との究極の繋がりや救済として捉え直す視点が極めて独創的であり、静謐な映像美の中に、ヒリヒリするような生への執着が息づいています。
ケヴィン・ゼガーズが見せる繊細な揺らぎと、蒼井優が放つ儚くも強烈な存在感は、見る者の心を激しく揺さぶります。死を望む者たちが集う光景が、なぜこれほどまでに透明感に満ち、美しく見えてしまうのか。その矛盾こそが本作の真髄であり、観客は倫理を超えた先にある究極の慈愛と、孤独の深淵を体験することになるはずです。