増村保造監督と若尾文子が到達した、情念の極北とも言える傑作です。狂気と隣り合わせの純愛を、冷徹なリアリズムとスピード感で描き出す演出は圧巻。国家や共同体の倫理に抗い、ただ一つの愛を貫こうとする女性の、凄まじい意志の強さに魂が震えます。
若尾文子の瞳に宿る、神々しささえ感じさせる凄みが本作の核心です。戦時下の狂騒の中、愛する者を独占するために選んだ過激な決断。それは究極の利己主義でありながら、個人の尊厳を守り抜く切実な抵抗でもあります。愛が美談を超え、破壊的な力へと昇華される瞬間を、ぜひその目で目撃してください。