本作の白眉は、大川橋蔵という稀代のスターが放つ、抗いがたいほどに美しい「色香」と「気品」の融合にあります。歌舞伎界から転身した彼の端正な所作は、銀幕の中で一輪の牡丹のように鮮烈に咲き誇ります。大河内傳次郎ら重鎮との共演がもたらす重厚な緊張感は、様式美の極致へと観客を強烈に惹きつけます。
画面を彩る色彩と陰影が織りなす映像美も圧巻です。「緋」が象徴する情熱と、宿命の哀しみが、橋蔵の憂いを含んだ瞳を通して痛切に訴えかけてきます。伝統的美意識と圧倒的なスター性が幸福な出会いを果たした、日本映画黄金期の熱量が凝縮された珠玉の逸品といえるでしょう。