本作の最大の魅力は、名コメディアンであるミルトン・バールの圧倒的な存在感と、軽快なスクリューボール・コメディのテンポが謎解き要素と見事に融合している点にあります。虚実が入り混じるスリリングな展開の中で、バールが見せる滑稽かつ知的な演技は、単なる喜劇の枠を超えた人間味を感じさせ、観客を物語の深淵へと一気に引き込みます。
ジェームズ・ロナルドの原作小説を映画化するにあたり、本作は文字による心理的な緊張感を、視覚的なドタバタ劇とウィットに富んだ会話劇へと見事に昇華させました。活字では表現しきれない絶妙な「間」や表情の機微が映像ならではのダイナミズムを生んでおり、フィクションと現実の境界線で翻弄される主人公の悲喜劇を、より立体的かつエネルギッシュに描き出すことに成功しています。