モロッコの歴史の狭間で揺れる人々の情熱を、これほどまでに気高く描き出した作品は稀有です。ユダヤ系とイスラム系の家族がカサブランカで育んだ深い絆。監督は、政治の荒波に翻弄されながらも隣人愛を貫こうとする人間の高潔さを、ノスタルジックかつ繊細な映像美で浮き彫りにしています。
キャスト陣が魅せる魂の共鳴には、震えるような感動を覚えます。去りゆく者と残る者が交わす沈黙は、言葉以上に雄弁に「共有されたルーツ」の尊さを語るでしょう。時代に引き裂かれる痛みを抱えながらも、愛と寛容を標榜し続ける本作は、混迷を極める現代にこそ響く至高の人間讃歌です。