エジプト映画の黄金期を象徴する本作は、ライラ・ファウジの圧倒的な気品とカマール・エル=シナウィの情熱が火花を散らす、至高の愛のドラマです。社交界の華やかさの裏に潜む孤独と、真実の絆を求める心の叫びが、洗練された演出で鮮烈に描かれています。ナブルスィが添える軽妙なスパイスも、物語の奥行きを深める絶妙な役割を果たしています。
世界的な名作オペレッタを原作としながらも、エジプト独自の情緒を織り交ぜた翻案が見事です。舞台では成し得ない繊細な表情のクローズアップが、富と愛の狭間で揺れる心理を克明に映し出し、映像ならではの多層的な感動を呼び起こします。古典を普遍的な共感へと昇華させたその手腕は、今なお観る者の魂を揺さぶり続けてやみません。