本作の魅力は、亡命の地ダラムサラの熱気と、そこに通底する静謐な祈りのコントラストを克明に映し出した点にあります。ダライ・ラマ14世の言葉は、混迷する現代社会において我々が失いかけている「魂の自由」を鮮烈に問いかけます。レンズが捉えたチベットの人々の瞳には、困難を生き抜く強靭な生命力が宿っており、観る者の心を激しく揺さぶります。
范文雀と和田周の語りは、映像に深い情緒をもたらし、遠い異国の問題を血の通った自分事へと昇華させています。ドキュメンタリーの真実味が彼らの凛とした声と共鳴し、歴史に翻弄されながらも伝統を尊ぶ人々の気高さを際立たせます。人間の尊厳と平和への渇望を美しく結晶化させた、至高の映像体験です。