あらすじ
月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。
作品考察・見どころ
本作が提示するのは、劇的な救済ではなく、ただ隣に居続けるという「静かな祈り」のような連帯です。PMSやパニック障害という目に見えない痛みを抱えた二人の距離感を、監督は16mmフィルムの柔らかな質感で丁寧に掬い上げました。恋愛でも単純な友情でもない、名前のつかない関係性の尊さに、観る者は心の奥底が静かに震えるような感動を覚えるはずです。
松村北斗と上白石萌音の抑制された演技は、役者の自我を消し去り、実在する一人の人間としての呼吸をスクリーンに宿しています。宇宙や星空といったモチーフが、個人の苦しみさえも果てしない時間の一部として優しく包み込む演出は見事です。夜明けを待つすべての人へ、確かな光を分け与えてくれる本作は、現代を生きる私たちのための救いの一助となる傑作といえるでしょう。