あらすじ
フランスの名匠アルノー・デプレシャンが自身の映画人生を投影しながら、映画の魅力を観客の視点から語り尽くした自伝的シネマエッセイ。 「そして僕は恋をする」「あの頃エッフェル塔の下で」でマチュー・アマルリックが演じたポール・デュダリスを主人公に、初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、19世紀末の映画の誕生から現在に至るまでの映画史とともに描きだす。本編には映画史に功績を残した50本以上の名作が登場し、デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カベルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も引用しながら“映画とは何か”をひもといていく。
作品考察・見どころ
この作品は、映画という魔法に対する究極のラブレターです。アルノー・デプレシャン監督が描くのは、銀幕を見つめる観客という存在の神秘性です。暗闇の中で光を見つめる視線がいかに個人の記憶と溶け合い、人生の断片を形作っていくのか。そのプロセスを瑞々しい映像美で捉えており、映画館という聖域で私たちが何を体験しているのかを鮮烈に再確認させてくれます。
若き日の分身を演じるルイ・ビルマンの瑞々しさと、ドキュメンタリーとフィクションの境界を軽やかに飛び越える独創的な構成が見事です。映像表現でしか到達できない共感覚的な演出は、観る者の個人的な回想を呼び覚まします。映画への純粋な献身が詰まったこの讃歌は、すべての映画ファンにとって、自身の情熱を鏡に映し出すような忘れがたい体験となるでしょう。