Margaretha KrookとLena Nymanが放つ、凄まじい心理的緊張感こそが本作の白眉です。出口のない密室で剥き出しになったエゴがぶつかり合う様は、観る者の精神を鋭く抉ります。俳優の微細な表情を執拗に捉えるクローズアップが、逃げ場のない恐怖を静謐な空間の中に増幅させており、一瞬たりとも目が離せません。
サルトルの戯曲を映像化した本作は、カメラを通じ「他者の視線」という地獄を舞台以上に鮮烈に具現化しました。言葉の応酬が身体的暴力以上の衝撃を伴って迫る演出は、映像でしか到達し得ない心理描写の極致です。他者という鏡に縛られる人間の業を、これほど残酷かつ美しく描き出した表現は他に類を見ないでしょう。