伝説的俳優パトリック・ドヴェールの剥き出しの躍動感が、本作を唯一無二の傑作にしています。理不尽な社会に翻弄される男が、怒りを糧に大衆の欺瞞を切り裂く姿は圧巻です。彼の爆発的な演技は、滑稽さと悲哀が同居する人間の本質を体現しており、観る者の魂を激しく揺さぶります。
ジャン・ジャック・アノー監督が描く、集団心理の愚かさと手のひら返しの醜悪さは、痛烈な社会風刺として響きます。勝利に熱狂する周囲の身勝手さを、これほど皮肉たっぷりに、かつ極上の娯楽として描いた演出は実に見事。個人の尊厳を問い直す、爽快でいて苦い余韻を残す名作です。