本作が放つ最大の魅力は、圧倒的な「静謐さ」と「残酷さ」の倒錯した融合にあります。主演のローレンス・ルップが体現する、一切の罪悪感を欠いた優雅な佇まいは、観客の倫理観を根底から揺さぶります。洗練された映像美が、道徳の欠如した非道な行為を淡々と映し出す演出は、皮肉に満ちた喜劇としての鋭利な刃を突きつけてくるかのようです。
権力と富が法律すら無効化する現代社会の歪みを、これほどまでに不敵に、そして冷徹に描いた作品は他にありません。勧善懲悪の枠組みを嘲笑う不遜なメッセージ性は、観る者に強烈な不快感と知的好奇心を与えます。スクリーン越しに突きつけられるのは、正義が機能不全に陥った世界の、あまりにも澄み切った絶望の景色なのです。