ジーン・ド・カサリスが見せる圧倒的な才覚が、本作の真骨頂です。彼女が演じるキャラクターの絶妙に噛み合わない会話劇は、観る者を煙に巻くような不思議な高揚感を与えます。ガス・マクノートンとの呼吸も完璧で、言葉の応酬だけで濃密なユーモアを構築する手腕には、現代にも通じる洗練された美学が宿っています。
日常の些細な困りごとを極上の娯楽へ昇華させる演出も見事です。洗練された脚本と演者の表現力が融合し、滑稽さの奥に潜む人間の愛らしさを描き出しています。言葉のレトリックと間の魔術を堪能できる珠玉の一本であり、知的な混乱がもたらす笑いは、時代を超えて観る者の心を軽やかに解きほぐすことでしょう。