あらすじ
デパートガールの土屋名美はある日友人からバイトを紹介され軽い気持ちで受けるが、それはビニール本のモデルだった。世に出たビニ本のせいで名美の人生の歯車は狂う。そんな名美のビニ本に魅せられた男・村木が接近してくるのを名美はけ入れ…。
作品考察・見どころ
石井隆の原作が持つ劇画的な情念を、池田敏春監督が鋭利な映像美で昇華させた本作は、単なるエロティシズムの枠を超えた「痛みの叙事詩」です。泉じゅんが演じるヒロイン・ナミの、絶望と狂気の境界線で揺れる瞳は観る者の魂を射抜き、都会の闇に沈む冷徹なブルーの色彩設計が、逃れられない宿命の残酷さを鮮烈に際立たせています。
原作特有の歪んだ愛の形を、映像ならではの濃密な陰影と肉体の質感で再構築した手腕は見事です。静寂と怒号が交錯する演出や、湿り気を帯びた路地裏の造形は、漫画の紙面上では表現しきれない「体温と死臭」を強烈に放ち、観客を底なしの没入感へと誘います。これこそが、視覚表現が到達した情念の極北と言えるでしょう。