本作は、都市の湿り気と孤独を極限まで美化し、愛と暴力が交差する瞬間の煌めきを鮮烈に焼き付けた傑作です。監督の田中登が描く映像美は、冷たい雨に打たれるような叙情性に満ち、鹿沼絵里の震えるような繊細さと地井武男が放つ狂気的な執着が火花を散らします。観る者は、剥き出しの肉体が放つ熱量に圧倒され、人間の魂が持つ根源的な悲鳴を聴くことになるでしょう。
石井隆の原作漫画が持つ劇画特有の「濡れた質感」を、実写というメディアで見事に昇華させている点も白眉です。静止画では表現しきれない呼吸の乱れや肌の質感、そして頽廃的な街の空気が、映像によってより濃密に、痛切に観客の胸へと迫ります。紙の上から飛び出した名美という虚像が、実体を持って愛に餓える姿は、映像表現でしか到達し得ない究極の情念を具現化しています。