成瀬巳喜男監督の初期短編である本作は、ナンセンスな笑いの中に、人間の虚栄心と権威への皮肉を鋭く描き出した珠玉のコメディです。名子役、青木富夫の圧倒的な存在感が素晴らしく、彼の自由闊達な動きが、形式に縛られた大人たちの世界を軽やかに解体していく様子は圧巻です。髭という外面的な記号に固執する滑稽さを通じて、人間の本質を突く演出が光っています。
サイレント映画特有の流れるような編集と、視覚的なギャグの応酬は、現代の観客にも鮮烈な驚きを与えます。無声映画ならではの身体表現の豊かさが言葉以上の真実を語り、日常の些細なモチーフからドラマチックな笑いを生み出す成瀬演出の原点を感じさせます。権威という虚構を笑い飛ばすエネルギーに満ちた、極めてモダンで洗練された一作と言えるでしょう。