サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックが、そのキャリアの黎明期に挑んだ本作は、峻厳な自然を背景に人間の愛憎を鮮烈に描き出した野心作です。閉塞感漂う村を舞台に、孤立した魂が衝突し合うドラマには、後のヒッチコック作品に通じる心理的緊張感と、視覚的なコントラストへの鋭いこだわりが息づいています。
妖艶な魅力を放つニタ・ナルディの圧倒的な存在感は、厳しい山岳地帯という舞台設定と相まって、画面に抗いがたいエロティシズムと危うい緊張をもたらしています。失われた伝説の作品として語り継がれる本作が持つ、荒々しくも美しい情熱の片鱗は、映画史における至宝としての輝きを今なお失っていません。