本作の核は、九〇年代映画特有の乾いた空気感と、そこから滲み出る逃亡劇の狂おしいほどの熱量にあります。単なるアクションの枠を越え、抑圧された魂が既成の枠組みから逸脱しようとする剥き出しの人間賛歌。刹那的なカット割りと緊迫感溢れる演出が、観る者の本能を激しく揺さぶる一作です。
主演の片岡礼子が体現する、危うさと野生的な力強さが同居したヒロイン像は圧巻です。新藤栄作や小沢和義ら実力派が織りなす不穏な空気感は、予定調和を拒絶する圧倒的なダイナミズムを生み出し、鑑賞後も鮮烈な余韻を残します。極限状態でこそ輝く人間の本質を突いた、情熱的な映像体験がここにあります。