本作が描き出すのは、忘却への欲望と、その裏に潜む狂気です。タイトルの「忘憂草」が象徴する、過去の痛みから逃れようとする切実な心理を、息を呑むスリラー演出でえぐり出しています。映像に漂う静かな違和感が、観客の深層心理にじわじわと侵食していく感覚は、まさに本作ならではの醍醐味です。
ショウ・シーチェンら実力派キャストによる、抑圧された感情が爆発する演技は圧巻です。視線の揺らぎや緻密な沈黙の使い方が、言葉以上に不穏な予兆を語り、観る者を予測不能な心理的迷宮へと誘います。救済と絶望が表裏一体であることを突きつけるその鋭いメッセージ性は、鑑賞後も長く心に刺さり続けることでしょう。