水の都を迷宮のごとき死の舞台へと変貌させた本作の魅力は、白黒映像が生み出す圧倒的な陰影表現にあります。立ち込める霧と揺れる水面が、観る者を逃げ場のない閉塞感へと誘い、美しさと恐怖が表裏一体となったゴシック・ホラーの真髄を提示しています。歴史ある街並みが、狂気を秘めた執着心の背景として冷徹に機能している点は見事です。
仮面の殺人鬼が象徴するのは、永遠の美を固定しようとする歪んだ欲望です。静寂に包まれた水中からの視点がスリルを加速させ、滅びゆくものの美しさと、それを冒涜する人間のエゴを鋭く抽出しています。イタリアン・ホラー黎明期の熱量と耽美な映像美に、心ゆくまで酔いしれてください。