尾上鯉之助が見せる鮮やかな変身美は、歌舞伎の様式美と映画的躍動が見事に融合した、正に映像の魔術と呼ぶべき極致にあります。一人の演者が多角的な役柄を演じ分けるスリルと、画面を彩る華麗な色彩のコントラストは、観る者を一瞬で絢爛豪華な夢の世界へと誘います。単なる娯楽時代劇に留まらない、視覚的な快楽を追求した美学が凝縮されています。
また、松島トモ子らの瑞々しい共演が、重厚な正義の物語に軽やかなリズムと人間味を与えている点も見逃せません。変装という「嘘」を重ねることで、かえって人間としての「真実」の強さが浮き彫りになる構成は見事です。演者の圧倒的なカリスマ性が放つ情熱と、計算し尽くされた空間演出のシナジーは、時代を超えて観客の魂を揺さぶり続けます。